ビタミン
ナイアシン(ビタミンB3)が多い食品と、高用量が失敗した話
欠乏は豊かな国ではほぼ消えました。代わりに崩れたのは、高用量ナイアシンが心臓を守るという期待です — 25,673人の試験で。

多く含む食材
掲載している食材の中で多い順です。食材ごとに表示の基準が少し異なるため、正確な順位ではなくおおよその比較として見てください。
体での働き
NADとNADPという補酵素の材料です。この二つはエネルギーを取り出すほぼすべての反応、DNA修復、脂質とコレステロールの合成に関わります。体内で最も働く補酵素と呼んでも大げさではありません。
ほかのビタミンと違う点がひとつあります。体はトリプトファン(アミノ酸)からナイアシンを作れます。 効率は低く、トリプトファン60mgでナイアシン1mg程度ですが、たんぱく質を十分にとっていればその経路だけで必要量のかなりを満たします。
1日の推奨量
成人1日14〜16mg NE(ナイアシン当量)が一般的な基準です。たんぱく質を1日60g以上とる人は、トリプトファン由来だけでこの数値に近づきます。
欠乏症の ペラグラ は皮膚炎・下痢・認知症の三徴として現れます。とうもろこしを主食にしながら伝統的なアルカリ処理(ニシュタマリゼーション)を行わなかった地域で流行しました。とうもろこしのナイアシンは腸が外せない形で結合しているためです。
穀物の強化とたんぱく質摂取のおかげで、今では多い欠乏ではありません。ただし慢性的な飲酒、吸収不良、カルチノイド症候群では今も見られます。
吸収に影響するもの
普通の食品のナイアシンはよく吸収されます。例外がとうもろこしで、結合型のままでは利用されません。とうもろこしを石灰水に浸す中南米の伝統的な調理は、この結合を解く工程でした。
コーヒーにもナイアシンがあります。焙煎でトリゴネリンがナイアシンに変わるためですが、淹れたコーヒー100gあたり0.5mg程度で、供給源と呼べる量ではありません。
水溶性なのでゆでると汁に出ます。ただしビタミンCほど熱に弱くはありません。
注意したいこと
高用量ナイアシンの話は、栄養学で学ぶところの多い事例です。 ナイアシンはHDLコレステロールを上げ、中性脂肪を下げます。HDLが高いと心血管リスクが低いという観察が長く積み上がっていたので、薬でHDLを上げれば事故が減ると期待されました。
AIM-HIGH はスタチン服用中の3,414人に徐放性ナイアシン1日1.5〜2gを追加しました。HDLは35から42mg/dLに上がり、中性脂肪は164から122に下がりました。しかし 効果がないため平均3年で早期中止 となりました。
HPS2-THRIVE は25,673人で再度試験しました。4年近く追跡した結果、主要血管事故は13.2%対13.7%で 差がなく(率比0.96、95% CI 0.90〜1.03、P=0.29)、糖尿病コントロールの重大な悪化(絶対3.7ポイント増)と新規糖尿病診断(1.3ポイント)が増えました。
数値(HDL)を動かしても結果(事故)がついてこないことを示した事例です。
そのほか高用量では ほてり(フラッシング) がよくあり、肝障害や尿酸上昇が起こりえます。上限は強化食品とサプリメント由来で1日35mgです。食品では問題になりません。
出典
栄養の数値と健康に関する記述が依拠しているデータベースと保健機関です。
- 1USDA FoodData Central食品成分データベース
- 2NIH Office of Dietary Supplements保健機関
- 3European Food Safety Authority (EFSA)保健機関
- 4Effects of extended-release niacin with laropiprant in high-risk patients臨床試験HPS2-THRIVE Collaborative Group N Engl J Med 2014PMID 25014686
- 5Niacin in patients with low HDL cholesterol levels receiving intensive statin therapy臨床試験AIM-HIGH Investigators N Engl J Med 2011PMID 22085343











