目次
どんな食材か
アマランサスはヒユ科植物の種子で、あわより小さな粒です。いねや小麦のようなイネ科ではないため穀物ではなく擬穀物に分類され、グルテンを含みません。中南米が原産で、アステカ文明では主食の一つでした。煮ると少しとろみが出て、ぷちぷちした食感が残るので、かゆやサラダに混ぜたり、炒ってはぜさせたりして食べます。葉を野菜として食べる地域もあります。
学名 Amaranthus
アマランサスは鉄7.61mg、マグネシウム248mg、タンパク質13.6gと、穀物のなかでも成分表が華やかです。スーパーグレインと呼ばれる理由です。
ところが、その鉄が実際に体へ入るのかを試した研究があります。その結果がこの項目の核心です。
2012年《The Journal of Nutrition》。 ケニアの12〜59か月の子ども279人を三群に分け、16週間を過ごしました。開始時点で38%が貧血、30%が鉄欠乏でした。
| 群 | 一食の鉄 | フィチン酸対鉄のモル比 |
|---|---|---|
| 対照群——精製しないトウモロコシ粥 | 4.1mg | 5対1 |
| アマランサス群——トウモロコシ30% + アマランサス70%の粥 | 23mg | 3対1 |
| 粉末群——トウモロコシ粥 + 微量栄養素粉末 | 6.6mg | 2.6対1 |
結果です。
- 粉末群:貧血46%減、鉄欠乏70%減、鉄欠乏性貧血75%減。ヘモグロビンとフェリチンが上昇
- アマランサス群:ヘモグロビンも鉄の状態も有意な変化なし
アマランサス群は対照群より鉄を5.6倍多く食べました。 それで何も起きず、鉄を1.6倍しか与えなかった粉末のほうが効きました。
論文がその理由を書いています——食事のフィチン酸対鉄の比が高かったからです。アマランサスの鉄は入っていたが、吸収されなかった。
主な効果
- 栄養データ
マグネシウム248mg、マンガン3.33mg——成分表だけ見れば穀物のなかで上位です
調理前のアマランサス100gあたり:
- マグネシウム248mg——1日基準値の59%
- マンガン3.33mg——1日基準値の145%
- 鉄7.61mg——1日基準値の42%
- リン557mg、カリウム508mg、カルシウム159mg
- タンパク質13.6g、炭水化物65.2g、食物繊維6.7g、脂質7.02g
- 亜鉛2.87mg、銅0.525mg、セレン18.7µg
- 葉酸82µg、ビタミンB6 0.591mg
- 熱量371kcal、糖類1.69g、ナトリウム4mg
ほかの穀物と並べるとこうなります。
アマランサス キヌア 玄米 オーツ麦 マグネシウム 248mg 197mg 143mg 177mg カルシウム 159mg 47mg 23mg 54mg 鉄 7.61mg 4.57mg 1.47mg 4.72mg タンパク質 13.6g 14.1g 7.9g 16.9g カルシウム159mgが目を引きます。 穀物では珍しい値です。ただし1日基準値では12%であり、植物性のカルシウムの吸収は牛乳のカルシウムとは違います。
グルテンがありません。 アマランサスはイネ科ではなくヒユ科で、小麦・大麦・ライ麦とは植物学的に別です。セリアック病の方やグルテンを避ける方の選択肢になります。 ただし市販品は小麦を扱う設備で加工される場合があるので表示を確認してください。
アミノ酸の構成が穀物としてはバランスがよい。 穀物はたいていリジンが足りませんが、アマランサスはそうではありません。これは成分分析で確かめられる事実であり、このサイトが根拠の等級ではなく成分資料として表示する理由です。
ところがこの表を読むとき、必ず一緒に見るべきものがあります。
下の二つ目の項目に詳しく書いたとおり、アマランサスの鉄は入っている分だけ吸収されません。 フィチン酸が原因で、マグネシウム・亜鉛・カルシウムも同じ影響を受けます。成分表の数字は食べた量であって、吸収した量ではありません。
調理。 種がとても小さく、飯のようには炊けません。
- 水2.5〜3倍で20分ほど煮ます。粥に近い状態になります
- 米に混ぜるなら10〜20%程度まで。それ以上入れると飯がべちゃつきます
- フライパンで煎るとポップコーンのようにはじけます。 これを振りかける食べ方が一般的です
- あらかじめ水に浸すか発酵させるとフィチン酸が減ります——理由は下に書きました
密閉して涼しい場所に。 脂質が7.02gと穀物としては高く、酸化が早い。長く置くなら冷蔵か冷凍を。
- 初期の研究
鉄の試験が二つ、正反対に分かれました——分かれた地点が重要です
[1][2]アマランサスの鉄について試験が二つあります。一方は何の効果もなく、一方は効果がありました。 その差こそがこの穀物についていちばん役に立つ事実です。
2012年《The Journal of Nutrition》——ケニア、効果なし。
- 12〜59か月の子ども279人、16週間
- 開始時点で38%が貧血、30%が鉄欠乏
- 三群:トウモロコシ粥(対照)、トウモロコシ30% + アマランサス70%の粥、トウモロコシ粥 + 微量栄養素粉末
群 一食の鉄 フィチン酸対鉄 結果 対照 4.1mg 5対1 — アマランサス 23mg 3対1 ヘモグロビン・鉄の状態に変化なし 粉末 6.6mg 2.6対1 貧血46%↓、鉄欠乏70%↓、鉄欠乏性貧血75%↓ この表の二行目と三行目を並べて見てください。 アマランサス群は粉末群より鉄を3.5倍多く食べたのに何も変わらず、粉末群ははるかに少ない鉄で貧血を46%減らしました。
論文が理由を書いています——食事のフィチン酸対鉄の比が高かったからです。
フィチン酸とは何か。 穀物や豆の種子がリンを蓄えておく形です。これが腸で鉄・亜鉛・カルシウム・マグネシウムと結合して吸収を妨げます。 アマランサスは鉄が多いが、フィチン酸も多い。
粉末群が使ったのはNaFeEDTAという形の鉄です。フィチン酸の妨害によく耐えるよう作られた形で、だから少ない量で効きました。
2020年《PLoS One》——エチオピア、効果あり。
南部エチオピアの貧血のある2〜5歳の子どもを対象とした集落無作為試験です。加工したアマランサス入りのパンをトウモロコシのパンと比べ、ヘモグロビン・貧血・鉄欠乏性貧血で効果を報告しました。
二つの試験の決定的な違いは「加工」です。
フィチン酸は浸漬・発芽・発酵で減ります。 穀物をパンにする工程にはたいていこの段が入ります。2012年の試験はアマランサスの粉を粥に入れ、2020年の試験は加工したアマランサスでパンを焼きました。
ですからこの二つは互いを否定しません。合わせて読むとこうなります。
- アマランサスには鉄が多い——成分表で確かめられます
- ただ入れただけでは吸収されないことがある——2012年の試験
- 浸したり発酵させたりの処理を経れば変わりうる——2020年の試験
実用に移すとこうです。
- 使う前に数時間水に浸し、その水を捨ててください。 フィチン酸が減ります
- ビタミンCのある食べ物と一緒に。 このサイトのグアバの項目に書いたとおり、ビタミンCは植物性の鉄の吸収を上げます
- 茶やコーヒーは食事から離してください。 タンニンが鉄の吸収を妨げます
- 鉄欠乏と診断されたなら、アマランサスで解決する計画を立てないでください。 これは食品であって治療ではありません
等級を「初期の研究」に置きます。 どちらの試験も特定の地域の子どもが対象で、方向が分かれ、成人や鉄が足りている人に移す根拠ではありません。
- 確認されていない
血圧・コレステロール・体重に関する主張は確認されていません
アマランサスがスーパーグレインとして売られるなかでつく主張がいくつかあります。大半は人で確認されていません。
血圧とコレステロール。
2007年にアマランサス油を冠動脈疾患と高血圧に使った無作為試験があります。
ところがこれは穀粒ではなく油です。 アマランサス油はスクアレンが多く別の原料として売られており、穀粒を食べることと油を摂ることは別の介入です。 このサイトのセロリの項目で種子エキスと野菜を分けたのと同じ理由です。
そしてこのサイトは、アマランサスの穀粒を食べさせて血圧や脂質を測り、対照群と比べた試験を見つけられませんでした。
体重の減少。
タンパク質と繊維が多いから満腹感がよいだろうという話がつきます。もっともらしいのですが、アマランサスを食べさせて体重や摂取量を測った試験をこのサイトは見つけられませんでした。 そして100gで371kcalです。穀物だから当然ですが、低熱量の食品ではありません。
血糖。
グルテンがなく繊維があるから血糖によいだろうという話もあります。アマランサスの血糖指数はむしろ高いほうだと報告されてきました。 とくにポップコーンのようにはじけさせた形はデンプンがすでに糊化していて、より速く吸収されます。確定した臨床の根拠はありませんが、「グルテンがない」が「血糖によい」を意味しないことははっきりさせておきます。
まとめるとこうです。
- 成分として確認されたこと:マグネシウム248mg、マンガン3.33mg、鉄7.61mg、カルシウム159mg、グルテンなし、リジンを含むバランスのよいアミノ酸構成
- 部分的に確認されたこと:加工すれば貧血に効果があった(2020年)、ただ入れただけでは効かなかった(2012年)
- 確認されていないこと:血圧、コレステロール、体重の減少
- 誤解:グルテンがないことは血糖に有利という意味ではありません
アマランサスは成分表のよい穀物です。 ただし成分表がよいことと、その成分が体に入ることと、それで何かが良くなることは、三つの別の主張です。このサイトはその三つを違う等級で表示します。
上手な食べ方
- 使う前に数時間水に浸し、その水を捨ててください。 フィチン酸が減り、ミネラルの吸収に有利です。
- 水2.5〜3倍で20分煮れば粥に近くなります。飯のようにはなりません。
- 米に混ぜるなら10〜20%まで。それ以上はべちゃつきます。
- フライパンで煎るとポップコーンのようにはじけます。 サラダやヨーグルトに振りかけて。
- ビタミンCのある食べ物と一緒に摂ると鉄の吸収に有利です。
- 茶とコーヒーは食事から離してください。 タンニンが鉄の吸収を妨げます。
- グルテンがありません。 ただし市販品の交差汚染の表示を確認してください。
- 密閉して冷蔵か冷凍してください。脂質7.02gと穀物にしては高く、酸化が早い。
評価の読み方
効果ごとに、ヒトを対象とした研究がどこまで裏づけているかを4段階で示します。同じ食材でも項目によって評価は変わります。
- 栄養データ
- 食品成分表や保健機関の資料で確認できる事実です。臨床研究で検証する効能とは性格が異なります。
- 強い根拠
- 複数のランダム化比較試験やメタ分析で一貫して確認されています。
- 中程度の根拠
- ヒト研究はありますが、効果が小さいか結果が割れています。
- 初期の研究
- 細胞・動物研究、または小規模な予備研究の段階です。
- 確認されていない
- よく言われますが、ヒトを対象とした研究では確認されていません。
注意したいこと
- 鉄7.61mgがそのまま吸収されるわけではありません。 2012年のケニアの試験では鉄を5.6倍多く食べさせてもヘモグロビンと鉄の状態が動きませんでした。
- その理由はフィチン酸で、マグネシウム・亜鉛・カルシウムも同じ影響を受けます。
- 効果が出た2020年の試験は、加工したアマランサスで作ったパンを使いました。処理の工程が結果を分けました。
- どちらの試験も特定の地域の子どもが対象です。成人や鉄が足りている人に移す根拠ではありません。
- 血圧・コレステロールの試験は穀粒ではなくアマランサス油で行われたものです。
- 体重減少を見た試験は見つかりませんでした。 100gで371kcalです。
- グルテンがないことは血糖に有利という意味ではありません。 はじけさせた形は吸収がより速い。
- 鉄欠乏と診断されたなら、食品ではなく主治医の処方に従ってください。
栄養成分
調理前のアマランサスの穀粒100gあたりです。水を吸って3倍ほどに増えるので、炊いた一膳は生で50g前後です。
- エネルギー
- 371 kcal19%
- マグネシウム
- 248 mg59%
- マンガン
- 3.33 mg145%
- 鉄
- 7.61 mg42%
- たんぱく質
- 13.6 g27%
- 炭水化物
- 65.2 g24%
- 食物繊維
- 6.7 g24%
- 脂質
- 7.02 g9%
- リン
- 557 mg45%
- カリウム
- 508 mg11%
- カルシウム
- 159 mg12%
- 亜鉛
- 2.87 mg26%
- 銅
- 0.525 mg58%
- セレン
- 18.7 µg34%
- 葉酸
- 82 µg21%
- ビタミンB6
- 0.591 mg35%
- 糖質
- 1.69 g
- ナトリウム
- 4 mg<1%
%は米国FDAの1日基準値(成人・4歳以上)に対する割合です。各国の食事摂取基準は性別・年齢で異なります。
主な栄養素
お悩み別の根拠
この食材でつくる料理
出典
栄養の数値と健康に関する記述が依拠しているデータベースと保健機関です。
- 1Efficacy of processed amaranth-containing bread compared to maize bread on hemoglobin, anemia and iron deficiency anemia prevalence among two-to-five year-old anemic children in Southern Ethiopia: A cluster randomized controlled trial臨床試験Orsango AZ, et al. PLoS One 2020PMID 32986748
- 2Maize porridge enriched with a micronutrient powder containing low-dose iron as NaFeEDTA but not amaranth grain flour reduces anemia and iron deficiency in Kenyan preschool children臨床試験Macharia-Mutie CW, et al. The Journal of Nutrition 2012PMID 22810982
- 3USDA FoodData Central食品成分データベース
- 4PubMed学術文献



