目次
どんな食材か
パパイヤはパパイヤ科の植物の果実で、中央アメリカが原産です。木のように見えますが茎に木質がほとんどなく、厳密には大きな草に近い存在です。熟すと皮が黄色くなり果肉は橙色を帯びてやわらかくなり、中央に黒く丸い種がぎっしり詰まっています。パパインというたんぱく質分解酵素を含み、肉をやわらかくするのに使われます。酵素は特に未熟な青いパパイヤに多くあります。青い状態では果物ではなく野菜のように刻んでサラダに使います。
学名 Carica papaya
パパイヤを調べると血小板を上げるという話がよく出てきます。デング熱にパパイヤの葉を使う民間療法から来た言い方です。
その話をきちんと試した研究が2026年に出ました。そして結果は良かった。
2026年《JCO Global Oncology》——第III相、三重盲検、プラセボ対照、多施設。
- 抗がん治療で血小板が下がった患者219人を2対1で割り付け、198人を解析
- パパイヤ葉エキス群129人、プラセボ群69人
- 主要評価項目は血小板が75,000まで回復する速さ
- 4日目に回復した割合が59%対44%(p=0.042)。プロトコル遵守解析では64%対48%(p=0.034)
- グレード3以上の治療関連有害事象はありませんでした
- グレード2の血小板減少症の患者で、以後の抗がん治療の減量や遅延が必要な割合も低かった(25%対43%、p=0.033)
これはよく設計された試験で、結果も有意です。
ところがこの項目はパパイヤの果実についてのものです。
葉は果実ではありません。 そしてその試験が使ったのは葉を抽出して濃縮した製剤です。パパイヤを食べても同じことは起きません。
主な効果
- 確認されていない
葉エキスの第III相試験——なぜこれを果実に移せないのか
[1]2026年《JCO Global Oncology》。
設計 第III相、三重盲検、無作為、プラセボ対照、多施設 期間 2020年3月〜2024年10月 割り付け 219人を2対1で、198人を解析(エキス129、プラセボ69) 対象 抗がん治療による血小板減少症の患者 介入 パパイヤ葉エキス、血小板が75,000以上になるか輸血が必要になるか10日目まで 主要評価項目 4日目に血小板75,000以上に到達した割合 結果です。
解析 エキス プラセボ p 修正ITT 59% 44% 0.042 プロトコル遵守 64%(83/129) 48%(33/69) 0.034 以後の抗がん治療の減量・遅延(グレード2) 25% 43% 0.033 グレード3・4の治療関連有害事象はありませんでした。
この試験の質をまず認めるべきです。 三重盲検プラセボ対照の第III相多施設試験は、食品に関わる研究では見ることの少ない水準です。このサイトに載る材料の大半が持つ根拠よりはるかに強い。
ではなぜ等級を「確認されていない」に置くのか。
この項目はパパイヤの果実についてのもので、その試験が使ったのは葉のエキスだからです。
三つが違います。
第一に、部位が違います。 葉と果実は同じ植物でも成分が違います。トマトの葉とトマトの果実が違うのと同じで、実際トマトの葉には果実にないアルカロイドがあります。
第二に、形が違います。 抽出は特定の成分を選んで濃縮する工程です。このサイトのセロリの項目に書いたのと同じ問題です。
第三に、対象が違います。 この試験は抗がん治療で血小板が下がった患者を対象にしました。血小板が正常な人に何が起きるかを見た試験ではありません。
デング熱についても書いておきます。 パパイヤの葉をデング熱の血小板減少症に使う伝統があり、その方面の研究もあります。ただしこのサイトは果実の項目なので、その根拠を果実の効能として移しません。
パパイヤ葉茶や葉エキスの製品を考えているなら、それはこの項目が扱う食品とは別のものです。そして抗がん治療中、または血液の病気がある場合は必ず主治医に相談してください。 血小板に作用するということは、出血や凝固にも影響しうるという意味です。
正直な結論です。
- パパイヤ葉エキスが抗がん治療患者の血小板回復を早めた——第III相試験が示したのはこれです
- パパイヤの果実を食べて血小板が上がるという根拠を、このサイトは確認できませんでした
- ですから果実の等級は「確認されていない」です
- 栄養データ
ビタミンC 60.9mg、リコピン1,830µg——果実の実際の成分
生パパイヤ100gあたり:
- ビタミンC 60.9mg
- リコピン1,830µg
- 葉酸37µg
- 熱量43kcal、炭水化物10.8g、糖類7.82g、食物繊維1.7g
- カリウム182mg、マグネシウム21mg、カルシウム20mg
- ビタミンA 47µg RAE、β-カロテン274µg
- タンパク質0.47g、脂質0.26g、ナトリウム8mg
- ビタミンE 0.3mg、ビタミンK 2.6µg
ビタミンC 60.9mgがここでいちばん役に立つ数字です。 成人の推奨量が100mg前後なので、100gで60%を超えます。 中くらい1個の可食部が約300gなので、半分で1日分が足ります。
果物 ビタミンC(100g) グアバ 228mg キウイ 92.7mg パパイヤ 60.9mg オレンジ 53.2mg マンゴー 36.4mg リコピン1,830µgも見ておく値です。 生トマトが100gに約2,570µgです。パパイヤのオレンジ色の果肉がその色素で、すいかやグアバと同じ系統です。
ただしリコピンに1日の基準値はありません。 このサイトは基準値のない項目に比率を書きません。そしてリコピンを食べて人で何が良くなったのかは、トマトの項目に書いた分がすべてです。
熱量43kcalは果物のなかで低いほうです。 マンゴーが60kcal、バナナが89kcal。糖類7.82gも低い——マンゴー13.7g、バナナ12.2gと比べれば半分ほどです。
ただし食物繊維は1.7gと多くありません。 グアバの5.4gと対照的です。
選び方。 皮が緑から黄色へ移り、指先に軽く沈むころが食べごろです。完全に緑なら未熟です。
未熟なら常温に置いてください。 冷蔵庫に入れるとその状態で止まります。熟してから冷蔵を。
種はふつう食べません。 こしょうに似た辛みがあり、下に書く理由で量を増やさないでください。
未熟な青パパイヤは別の食品として扱います。 東南アジアでサラダや炒めものに使い、熟したものよりラテックスが多い。
- 初期の研究
種と腸内寄生虫——2007年の小規模な予備研究
[2]パパイヤの種を腸内寄生虫に使う伝統があり、それを試した研究がひとつあります。
2007年《Journal of Medicinal Food》。 腸内寄生虫のある人に乾燥パパイヤ種子を与えた無作為試験です。論文みずから「予備研究(pilot study)」と書いています。
これをどう読むか。
- 予備研究は本試験を設計するための段階です。 結論を出すのには使いません
- 規模が小さい
- その後これを確認した大きな試験を、このサイトは見つけられませんでした
- そして使ったのは果実ではなく乾燥した種子です
腸内寄生虫が疑われるなら診断と治療を受けてください。 効果の確立した駆虫薬があり、そちらが安全で確実です。このサイトはパパイヤの種を駆虫目的で勧めません。
種を多く食べないほうがよい理由もあります。
パパイヤの種にはベンジルイソチオシアネートが含まれます。こしょうのような辛みのもとで、多量についての安全性資料が十分ではありません。そして動物研究で高用量のパパイヤ種子が精子に影響したという報告があります。人で確認されたものではありませんが、料理に使う程度を超えて毎日多く食べる理由はありません。
まとめるとこうです。
- 確認されたこと:成分——ビタミンC 60.9mg、リコピン1,830µg、葉酸37µg
- 別の部位で確認されたこと:葉エキスが抗がん治療患者の血小板回復を早めた(第III相)
- 予備段階:乾燥種子と腸内寄生虫(2007年、小規模)
- 確認されていないこと:果実を食べて血小板が上がるという主張
- 確認されていない
消化を助けるという主張——そしてアレルギーと妊娠の注意
パパイヤにもっともよくつく主張が消化です。 根拠として示されるのがパパインというタンパク質分解酵素です。
パパインがタンパク質を分解するのは事実です。 実際、肉の軟化剤として使われます。そして未熟な青パパイヤに多く、熟すほど減ります。
ところがこのサイトは、パパイヤを食べさせて消化機能を測り、対照群と比べた臨床試験を見つけられませんでした。
このサイトのマンゴーといちじくの項目に同じ構造を書きました。 酵素が入っていることと、人が食べて消化が改善することは別の主張です。口から入った酵素は胃酸と消化酵素に先に出会います。
そして必ず書くべき注意が三つあります。
第一に、ラテックスアレルギーとの交差反応です。
パパイヤにはラテックス成分があり、天然ゴムラテックスにアレルギーのある方がパパイヤに反応する例が報告されています。 これをラテックス-フルーツ症候群といい、バナナ・アボカド・キウイ・くりも同じ一覧に入ります。
ラテックス手袋に反応したことがあるなら、はじめてパパイヤを食べるときは気をつけてください。口の周りがかゆい、腫れる感じがあれば中止して受診してください。
第二に、妊娠中の未熟なパパイヤです。
未熟な青パパイヤのラテックスは子宮収縮と結びつけられてきた記録があります。 人で確定したものではありませんが、資料が十分でないほうに危険を冒す理由はありません。
- よく熟したパパイヤは一般に問題ないと見られています
- 未熟な青パパイヤと、それで作るサラダや炒めものは妊娠中避けるほうが安全です
- パパイヤ葉茶や葉エキスも妊娠中はおすすめしません
第三に、パパイン酵素のサプリメントです。 これは果物ではなく抽出・濃縮した製品で、血液凝固に影響しうるという報告があります。ワルファリンのような抗凝固薬を飲んでいる方は主治医に相談してください。
果物として食べること自体は一般に安全です。 上の注意は未熟なもの、種、葉、そしてエキスについてのものです。
上手な食べ方
- 中くらい1個の可食部が約300gで、半分で1日のビタミンCが足ります。
- 皮が緑から黄色へ移るころが食べごろです。指先に軽く沈めばよい。
- 未熟なら常温に置いてください。 冷蔵庫に入れるとその状態で止まります。
- ライムやレモン汁をかけると独特の香りが抑えられ、ビタミンCも足されます。
- 種はふつう食べません。 多く食べないでください。
- 未熟な青パパイヤは別の食品として扱ってください。 ラテックスが多い。
- ラテックスアレルギーがあるならはじめて食べるとき気をつけてください。
- 妊娠中はよく熟したものだけにして、未熟なものと葉茶は避けてください。
評価の読み方
効果ごとに、ヒトを対象とした研究がどこまで裏づけているかを4段階で示します。同じ食材でも項目によって評価は変わります。
- 栄養データ
- 食品成分表や保健機関の資料で確認できる事実です。臨床研究で検証する効能とは性格が異なります。
- 強い根拠
- 複数のランダム化比較試験やメタ分析で一貫して確認されています。
- 中程度の根拠
- ヒト研究はありますが、効果が小さいか結果が割れています。
- 初期の研究
- 細胞・動物研究、または小規模な予備研究の段階です。
- 確認されていない
- よく言われますが、ヒトを対象とした研究では確認されていません。
注意したいこと
- 第III相試験が使ったのはパパイヤ葉エキスであって果実ではありません。 果実を食べて血小板が上がるという根拠は確認されていません。
- その試験の対象は抗がん治療で血小板が下がった患者でした。
- ラテックスアレルギーのある方には交差反応が報告されています(ラテックス-フルーツ症候群)。
- 妊娠中は未熟な青パパイヤと葉茶を避けてください。 ラテックスが子宮収縮と結びつけられてきた記録があります。
- パパイン酵素のサプリメントは果物とは違います。 血液凝固に影響しうるという報告があるので、抗凝固薬を飲んでいるなら相談してください。
- 種を多く食べないでください。 動物研究で高用量が精子に影響したという報告があります。
- 消化を助けるという主張は人を対象にした試験を見つけられませんでした。
- 種と寄生虫の研究は2007年の小規模な予備研究であり、駆虫は診断と処方を受けてください。
栄養成分
生パパイヤ100gあたりです。中くらい1個の可食部が約300gなので、下の数字は3分の1の量です。
- エネルギー
- 43 kcal2%
- ビタミンC
- 60.9 mg68%
- リコピン
- 1,830 µg
- 葉酸
- 37 µg9%
- 炭水化物
- 10.8 g4%
- 糖質
- 7.82 g
- 食物繊維
- 1.7 g6%
- カリウム
- 182 mg4%
- ビタミンA
- 47 µg5%
- βカロテン
- 274 µg
- マグネシウム
- 21 mg5%
- カルシウム
- 20 mg2%
- たんぱく質
- 0.47 g<1%
- 脂質
- 0.26 g<1%
- ビタミンE
- 0.3 mg2%
- ビタミンK
- 2.6 µg2%
- ナトリウム
- 8 mg<1%
%は米国FDAの1日基準値(成人・4歳以上)に対する割合です。各国の食事摂取基準は性別・年齢で異なります。
主な栄養素
この食材でつくる料理
出典
栄養の数値と健康に関する記述が依拠しているデータベースと保健機関です。
- 1Carica Papaya Leaf Extract to Improve Chemotherapy-Induced Thrombocytopenia: A Phase III Triple-Blinded, Randomized, Placebo-Controlled, Multicentric Trial臨床試験Ostwal V, et al. JCO Global Oncology 2026PMID 41812092
- 2Effectiveness of dried Carica papaya seeds against human intestinal parasitosis: a pilot study臨床試験Okeniyi JA, et al. Journal of Medicinal Food 2007PMID 17472487
- 3USDA FoodData Central食品成分データベース
- 4PubMed学術文献



