目次
どんな食材か
たらは冷たい海にすむ白身魚で、韓国語の名は口が大きいことに由来します。韓国の東海・南海や北太平洋に生息します。身に脂がほとんどなく淡白で、繊維が大きくほぐれます。脂はむしろ肝臓に集まっています。冬が旬で、澄んだ汁物にすることが多いです。卵やえらで作る塩辛、干したものなど、部位や加工法ごとに別の名を持つ魚でもあります。身がもろいので長く煮ると崩れます。
学名 Gadus macrocephalus
タラは脂がほとんどない白身魚です。100gに脂質0.67g、タンパク質17.8g、熱量82kcal。
そして興味深い臨床データが二つあります。 片方は結果が良く、もう片方は何も出ませんでした。両方を並べて初めて絵が合います。
2007年《Diabetes Care》。 インスリン抵抗性のある19人に、二つの食事を4週ずつ食べさせました。
- タラのタンパク質食
- BPVEM食——赤身の牛肉、豚肉、仔牛肉、卵、牛乳と乳製品
二つの食事はタンパク質の出どころだけが違うように組まれました。 食物繊維と、一価不飽和・多価不飽和・飽和脂肪酸の比(1.1対1.8対1.0)をそろえています。
測定法がこの試験の強みです。 インスリン感受性を高インスリン正常血糖クランプで測りました。質問票でも空腹時血糖でもなく、この分野で最も正確とされる方法です。
タラのタンパク質食でインスリン感受性が有意に改善した(p=0.027)。
ところが2020年《Nutrients》。 メタボリックシンドロームのある30人にタラのタンパク質加水分解物4gを8週間補充しました。
インスリン、血糖、GLP-1でプラセボとの差がなかった。脂質と体組成にも差がなかった。
どちらも事実です。 そしてその差を見ることがこの文書の要点です。
主な効果
- 初期の研究
最上級の測定法で出た結果と、サプリに移ったとたん消えた結果
[1][2]2007年《Diabetes Care》——食品で行った試験。
- インスリン抵抗性のある19人、クロスオーバー、各食事4週
- タラのタンパク質食 対 BPVEM(牛肉・豚肉・仔牛肉・卵・牛乳と乳製品)
- タンパク質の出どころだけを変える設計。食物繊維と脂肪酸比(一価不飽和1.1:多価不飽和1.8:飽和1.0)をそろえた
- インスリン感受性(M/I)を高インスリン正常血糖クランプで測定
- β細胞機能は経口ブドウ糖負荷試験由来の指標で評価
指標 結果 インスリン感受性(M/I) 有意に改善(p=0.027) 処分指数(β細胞機能 × M/I) 強い傾向(p=0.055)——有意でない 食事 × 基準時M/I の交互作用 p=0.022 基準時M/Iが低い人の30分C-ペプチド/ブドウ糖比 強い傾向(p=0.065)——有意でない クランプはこの分野の基準法です。 インスリンを一定速度で注入しながら血糖を正常に保ち、そのために必要なブドウ糖量を測ります。空腹時血糖やHOMAのような間接指標よりはるかに正確です。小さな試験ですが測定は本物でした。
ただし表の下三行を見てください。 有意だったのはインスリン感受性ひとつで、残りは「強い傾向」にとどまります。 p=0.055とp=0.065は有意水準を越えていません。論文がそう書き、このサイトもそう書きます。
2020年《Nutrients》——サプリで行った試験。
- メタボリックシンドロームのある30人、二重盲検並行群、各群15人、8週
- 1日タラのタンパク質加水分解物4gまたはプラセボ
- 主要評価項目:空腹時および食後の血糖
指標 結果 インスリン 群間差なし 血糖(空腹時・食後) 群間差なし GLP-1 群間差なし 中性脂肪 両群とも低下、群間差なし 総コレステロール、LDL 両群とも基準から低下、群間差なし 体組成 差なし 結論の一文は「効果がなかった」です。
二つをどう読むべきか。
第一に、介入が違います。 2007年は食事全体でタンパク質の出どころを変えたもの。2020年は普段の食事に4gのサプリを足したものです。前者は肉と卵と牛乳を魚に替えた結果、後者は粉を載せた結果です。
第二に、用量が違います。 4週間、食事のタンパク質の大半をタラで満たすのと、1日4gの加水分解物では規模が違います。
第三に、対象が違います。 インスリン抵抗性のある人とメタボリックシンドロームのある人。
第四に、どちらも小さい。 19人と30人です。
第五に、そしてこれが重要です。 2020年の試験で総コレステロールとLDLが両群とも下がりました。 プラセボ群でもです。試験に参加すること自体が食習慣を変えます。 群間比較がなければ、こうした変化を効果と取り違えます。
正直な結論です。
- 魚のタンパク質で赤身肉や加工肉を置き換えることは2007年の試験が支持する方向です
- タラのタンパク質サプリを買って載せることは2020年の試験が支持しません
- 19人と30人。 確定的な資料ではありません
- 等級を「初期の研究」に置きます
- 栄養データ
82kcalにタンパク質17.8g、セレン33.1µg
生のタラの身100gあたり:
- 熱量82kcal、タンパク質17.8g、脂質0.67g、炭水化物0g
- セレン33.1µg
- リン203mg、カリウム413mg、マグネシウム32mg
- コリン65.2mg、ビタミンB12 0.91µg、ビタミンB6 0.245mg、ビタミンB3 2.06mg
- ビタミンD 0.9µg、ビタミンA 12µg
- ナトリウム54mg、コレステロール43mg
熱量あたりのタンパク質がこの魚の正体です。 82kcalに17.8g。一切れ(120g)ならタンパク質21gで98kcalです。
タラ100g 鶏むね肉100g 熱量 82kcal 165kcal タンパク質 17.8g 31.0g 脂質 0.67g 3.6g 鶏むね肉よりタンパク質は少なく、熱量も少ない。 同じタンパク質を満たすにはタラを多く食べる必要がありますが、それでも熱量は低く保たれます。
セレン33.1µgが目を引きます。 成人の推奨量が55µgなので、100gで60%。一切れで1日分をほぼ満たします。セレンは土壌によって差があり、食品で満たすことに意味があります。
脂質0.67gがタラを規定します。 これが長所であり限界です。長所——熱量が低く、淡白で、どんな調理法にも合う。限界は次の項目で見ます。
コリン65.2mgも悪くありません。 卵ほどではありませんが魚としては高いほうです。
ナトリウムは54mgと低い。 ただしこれは生のタラの基準です。 塩ダラや干しダラはまったく別です。干した製品は重量が減って同じ100gに成分が濃縮され、塩漬けの製品はナトリウムが何十倍にもなります。
選び方と調理。 白身魚は身が崩れやすい。強火で長く火を入れるとぱさつきます。 タラは中心がちょうど不透明になるときに火を止めるのがよく、汁物には最後に入れて短く火を通します。
タラは水銀が低いほうに分類されます。 ただし妊娠中の魚の摂取は、種類と量について公式の勧告に従ってください。
- 確認されていない
「魚だからオメガ3」——タラはサーモンの10分の1です
この項目はよくある誤解の整理です。
魚を食べる理由としてオメガ3が挙げられることが多い。ところが魚なら同じ、ではありません。
100g基準でEPAとDHAを並べます。
EPA DHA 合計 タラ 0.064g 0.12g 0.18g サーモン 0.862g 1.1g 1.96g サーモンが約11倍です。 タラ100gのオメガ3はサーモン100gの10分の1に届きません。
理由は単純です。 タラは身に脂質をほとんど蓄えない白身魚です。脂質が0.67gしかないのに、その中でオメガ3だけ多いということはありえません。サーモン・サバ・イワシのように身に脂がのった魚がオメガ3の魚です。
ではタラの脂質はどこにあるのか——肝臓です。
ここで区別が必要です。 タラは脂質を肝臓に蓄えます。 だから肝油(cod liver oil)が存在し、それがオメガ3とビタミンA・Dの供給源として長く使われてきました。
タラの身と肝油は別の食品です。
- タラの身——タンパク質とセレン、脂質0.67g、EPAとDHAを合わせて0.18g
- 肝油——脂質の塊で、オメガ3とビタミンA・Dが濃縮
タラを食べたからといって肝油の利点が得られるわけではありません。 そして肝油はビタミンAが多く、過剰摂取への注意が別途必要です——このサイトの肝油の項目で別に扱います。
ではなぜタラを食べるのか。 理由はオメガ3ではなく別のところにあります。
- 82kcalにタンパク質17.8g——熱量あたりのタンパク質が良い
- セレン33.1µg——一切れで1日分に近い
- 2007年の試験で、赤身肉・卵・乳製品のタンパク質を置き換えたときにインスリン感受性が改善した
三つ目が核心です。 あの試験はタラを足したのではなく、ほかのタンパク質を置き換えたものでした。タラの価値は何を押し出すかにあります。
上手な食べ方
- 一切れ120gならタンパク質21gで98kcalです。
- 足すより置き換えです。 2007年の試験は赤身肉・卵・乳製品のタンパク質をタラに替えた結果でした。
- オメガ3を期待しないでください。 EPAとDHAを合わせて100gに0.18gで、サーモンの10分の1未満です。
- 中心がちょうど不透明になるときに火を止めてください。火を入れすぎるとぱさつきます。
- 汁物には最後に入れて短く火を通します。
- 塩蔵・乾燥品はナトリウムがまったく違います。 生の54mgをそのまま当てはめないでください。
- 肝油は別の食品です。 タラを食べることで代わりにはなりません。
- 身が崩れやすいので、返す回数を減らしてください。
評価の読み方
効果ごとに、ヒトを対象とした研究がどこまで裏づけているかを4段階で示します。同じ食材でも項目によって評価は変わります。
- 栄養データ
- 食品成分表や保健機関の資料で確認できる事実です。臨床研究で検証する効能とは性格が異なります。
- 強い根拠
- 複数のランダム化比較試験やメタ分析で一貫して確認されています。
- 中程度の根拠
- ヒト研究はありますが、効果が小さいか結果が割れています。
- 初期の研究
- 細胞・動物研究、または小規模な予備研究の段階です。
- 確認されていない
- よく言われますが、ヒトを対象とした研究では確認されていません。
注意したいこと
- 2020年の後続試験は完全なnullでした。タラのタンパク質加水分解物4gを8週補充して、インスリン・血糖・GLP-1・脂質・体組成のいずれもプラセボと差がありませんでした。
- 2007年の試験は19人で、有意だったのはインスリン感受性ひとつ。残りは「強い傾向」(p=0.055、p=0.065)で有意水準を越えていません。
- オメガ3の供給源ではありません。 EPAとDHAを合わせて100gに0.18gです。
- 肝油と混同しないでください。 肝油はビタミンAが多く、過剰摂取への注意が別途必要です。
- 塩ダラと干しダラはナトリウムが大きく違います。
- 妊娠中の魚の摂取は種類と量について公式の勧告に従ってください。
- 魚アレルギーがあるなら該当します。
栄養成分
生のタラの身100gあたりです。一切れはふつう100〜150g。干しダラや塩ダラはナトリウムが大きく変わります。
- エネルギー
- 82 kcal4%
- たんぱく質
- 17.8 g36%
- 脂質
- 0.67 g<1%
- セレン
- 33.1 µg60%
- リン
- 203 mg16%
- カリウム
- 413 mg9%
- コリン
- 65.2 mg12%
- ビタミンB12
- 0.91 µg38%
- ビタミンB6
- 0.245 mg14%
- ビタミンB3
- 2.06 mg13%
- マグネシウム
- 32 mg8%
- ビタミンD
- 0.9 µg5%
- オメガ3
- 0.20 g
- ナトリウム
- 54 mg2%
%は米国FDAの1日基準値(成人・4歳以上)に対する割合です。各国の食事摂取基準は性別・年齢で異なります。
主な栄養素
この食材でつくる料理
出典
栄養の数値と健康に関する記述が依拠しているデータベースと保健機関です。
- 1Dietary cod protein improves insulin sensitivity in insulin-resistant men and women: a randomized controlled trial臨床試験Ouellet V, et al. Diabetes Care 2007PMID 17682120
- 2Supplementation with Low Doses of a Cod Protein Hydrolysate on Glucose Regulation and Lipid Metabolism in Adults with Metabolic Syndrome: A Randomized, Double-Blind Study臨床試験Jensen C, et al. Nutrients 2020PMID 32635503
- 3USDA FoodData Central食品成分データベース
- 4PubMed学術文献
- 5NIH Office of Dietary Supplements保健機関



