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どんな食材か
チーズは牛乳のたんぱく質を固めて水分を抜いたものです。牛乳に酸やレンネットという酵素を加えるとカゼインが凝集し、固まり(カード)と液体(ホエイ)に分かれます。その固まりを集めて圧し、熟成させたものがチーズです。熟成期間と関わる微生物によって、モッツァレラのような作りたてのものから、パルミジャーノのように数年寝かせるものまで分かれます。熟成が長いほど水分が抜けてかたくなり、同じ重さあたりのたんぱく質・脂質・ナトリウムはいずれも上がります。
チーズは100gあたり飽和脂肪が19.2g。数字だけを見れば避けるべき食品です。
ところが、脂肪量を厳密に揃えて比べたヒト試験の結果はそうなりません。 2023年の《Advances in Nutrition》の解析は、無作為化比較試験7件をまとめ、1日チーズ135gを2週間以上食べた人と、同量の脂肪をバター(約52g)で食べた人を比べました。チーズ側のLDLが0.19mmol/L(約7mg/dL)低かった。
同じ飽和脂肪がなぜ違うのか。仮説は「乳のマトリックス」です——チーズでは脂肪がたんぱく質の網とカルシウムに閉じ込められ、バターの脂肪とは吸収のされ方が違う、という説明です。カルシウムが腸で脂肪酸と結びつき、一部がそのまま排出されるという観察も同じ筋です。
ただしこのページはチーズを勧める文章ではありません。 試験で使われた量は1日135g——スライスで5枚以上です。ナトリウムは100gあたり654mg。以下、そのまま書きます。
主な効果
- 強い根拠
同じ脂肪量なら、LDLはバターより低かった
[1]2023年《Advances in Nutrition》の系統的レビュー・メタ解析です。1,491件から10編が残り、うち無作為化比較試験7件が統合されました。
設計が肝心です。エネルギーと脂肪量を揃え、一方はチーズで(1日平均135g)、他方はバターで(約52g)摂り、14日以上続けました。
チーズ側の結果です。
- 総コレステロール −0.24mmol/L(95% CI −0.34〜−0.15)——約9mg/dL
- LDL −0.19mmol/L(95% CI −0.27〜−0.12)——約7mg/dL
- HDL −0.04mmol/L(95% CI −0.08〜−0.00)——約1.5mg/dL
最後の行を落としてはいけません。 HDLも一緒に下がりました。幅は小さいが、方向は「良い側」ではありません。
チーズを牛乳に置き換えたときは利益がありませんでした。 ただし試験は2件だけで、結論と呼べる段階ではありません。
限界も論文自身が書いています。 含まれた試験はすべてバイアスリスク「一部懸念」、異質性が大きく(I² 42.8〜59.8%)、試験数が少ない。著者の結論は「さらなる確認が必要」です。
- 中程度の根拠
観察研究では有害ではなく、わずかに良い側だった
[2]2023年、同じ誌のアンブレラレビューです。メタ解析・統合解析54編を集め、35件を再計算、4件を新たに解析し、健康アウトカム47項目を整理しました。
チーズ摂取が多い群と少ない群の相対リスクです。
- 全死因死亡 RR 0.95(0.92〜0.99)
- 心血管死亡 RR 0.93(0.88〜0.99)
- 心血管疾患の発症 RR 0.92(0.89〜0.96)
- 脳卒中 RR 0.93(0.89〜0.98)
- 2型糖尿病 RR 0.93(0.88〜0.98)
- 骨折全体 RR 0.90(0.86〜0.95)
- 認知症 RR 0.81(0.66〜0.99)
そして残りはすべて無関連でした。 論文の表現では「他のアウトカムでは関連が認められなかった」。がん死亡、高血圧の発症、前立腺がんは明示的に「関連なし」です。
これを大きく読まないでください。 RR 0.95は5%の差。観察研究なので因果は言えず、チーズをよく食べる人が他の面でも違う可能性を統計で消し切れません。エビデンスの等級(NutriGrade)も「中等度」でした。
認知症の0.81は幅が大きく見えますが、信頼区間の上端は0.99——かろうじて1を外れただけです。
著者自身の要約が正確です——「中立から中等度の利益」。
- 栄養データ
カルシウム密度は食品の中でも最上位
チェダーチーズ100gにカルシウム707mg。成人の推奨量(1,000mg)の71%です。
スライス1枚(28g)なら約198mg——牛乳1杯(200g、約240mg)に近い。小さな体積でカルシウムを埋める手段として、代わりは多くありません。
100gあたり、ほかに:
- たんぱく質23.3g——鶏むね肉に近い密度
- リン458mg、亜鉛3.67mg、セレン28.3µg
- ビタミンB12 1.06µg——推奨量の44%
- ビタミンA 316µg(すべてレチノール)
熟成チーズには乳糖がほとんどありません。 チェダーやパルミジャーノのようなハードチーズは熟成中に乳糖の大半が分解され、牛乳でお腹を壊す人でも平気なことが多い。乳糖不耐症ならモッツァレラやリコッタのようなフレッシュチーズより熟成チーズです。
代わりにナトリウムと飽和脂肪がついてきます。 100gあたりナトリウム654mg、飽和脂肪19.2g、コレステロール100mg。スライス1枚でナトリウム183mg——1日の上限(2,000mg)の9%です。
上手な食べ方
- 量を決めてから食べてください。 上の試験の1日135gは研究設計であって推奨量ではありません。1〜2枚(20〜56g)が現実的な量です。
- バターをチーズに替える——これが上のエビデンスが実際に言っていることに最も近い使い方です。パンにバターの代わりにチーズを載せる。
- プロセスチーズとナチュラルチーズを見分けてください。 スライス製品にはプロセスチーズが多く、ナトリウムと乳化剤が増えます。原材料表示でナチュラルチーズの割合を見ます。
- 熟成チーズは乳糖がほぼありません。 牛乳が負担な方の選択肢になります。
- 加熱してもナトリウムは変わりません。 溶かしても塩は減りません。
- カルシウムの吸収にはビタミンDが要りますが、チーズにはほぼ含まれません。日光や他の食品で別に確保してください。
評価の読み方
効果ごとに、ヒトを対象とした研究がどこまで裏づけているかを4段階で示します。同じ食材でも項目によって評価は変わります。
- 栄養データ
- 食品成分表や保健機関の資料で確認できる事実です。臨床研究で検証する効能とは性格が異なります。
- 強い根拠
- 複数のランダム化比較試験やメタ分析で一貫して確認されています。
- 中程度の根拠
- ヒト研究はありますが、効果が小さいか結果が割れています。
- 初期の研究
- 細胞・動物研究、または小規模な予備研究の段階です。
- 確認されていない
- よく言われますが、ヒトを対象とした研究では確認されていません。
注意したいこと
- 塩分が多い。 100gあたり654mg。高血圧の方やナトリウムを減らしている方は枚数を数えてください。
- 飽和脂肪19.2g/コレステロール100mg(100gあたり)。 上の試験は「バターの代わりに」の比較です。今までの食事にチーズを足すのとは違います。
- 妊娠中は非加熱殺菌乳のチーズを避けてください。 リステリアのためです。ブリー、カマンベール、ブルーチーズの非加熱殺菌品が該当します。
- 乳糖不耐症ならフレッシュチーズ(モッツァレラ、リコッタ、カッテージ)には乳糖が残っています。
- 片頭痛の誘発を報告する方がいます。 熟成チーズのチラミンが原因とされます。MAO阻害薬の服用中は熟成チーズは禁忌です。
- 上の観察研究の結果は因果ではありません。チーズを増やせば死亡率が下がるという意味ではありません。
お悩み別の根拠
この食材でつくる料理
出典
栄養の数値と健康に関する記述が依拠しているデータベースと保健機関です。
- 1Effect of Isoenergetic Substitution of Cheese with Other Dairy Products on Blood Lipid Markers in the Fasted and Postprandial State: An Updated and Extended Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials in Adultsメタ分析Pradeilles R, et al. Adv Nutr 2023PMID 37717700
- 2Cheese consumption and multiple health outcomes: an umbrella review and updated meta-analysis of prospective studiesメタ分析Zhang M, et al. Adv Nutr 2023PMID 37328108
- 3USDA FoodData Central食品成分データベース
- 4MFDS Food Composition Database · 식품안전나라食品成分データベース
- 5NIH Office of Dietary Supplements保健機関
- 6European Food Safety Authority (EFSA)保健機関
- 7PubMed学術文献



