目次
どんな食材か
芽キャベツはキャベツと同じ種の品種で、茎に沿ってびっしり付く小さな芽を食べます。キャベツの縮小版のような姿ですが、一株に一個ではなく一本の茎に数十個付きます。ベルギーのブリュッセル周辺で改良されたことが名前の由来です。苦みがありますが、霜に当たると甘みが増します。まるごと長くゆでると硫黄のにおいが強くなるため、半分に切って切り口を焼くほうが苦みが減り香ばしくなります。
学名 Brassica oleracea var. gemmifera
芽キャベツでまず知るべき数字はビタミンK 177µgです。100g、5個に入っている量で、成人の目安量(男性120µg)を超えます。
大半の人にとってこれは良い知らせです。 しかしワルファリンを服用中なら逆です。ビタミンKはワルファリンの作用を直接打ち消すので、急に増やしたり急にやめたりするとINRが揺れます。このページの注意事項を先にお読みください。
2つめの数字はビタミンC 85mg。オレンジ(53mg)より多く、100gで推奨量の94%が入ります。
臨床根拠はどうか。 芽キャベツだけを見た無作為化試験は事実上ありません。あるのは果物・野菜全般を見た用量反応メタ分析で、そのなかでアブラナ科野菜が心血管疾患・総死亡・がんと逆の関係を示しました。芽キャベツはアブラナ科です——ただしこれは観察研究で、この野菜1つの効果ではありません。
主な効果
- 中程度の根拠
アブラナ科野菜は心血管疾患・総死亡と逆の関係を示した——観察研究です
[1]2017年《International Journal of Epidemiology》。前向き研究 95件(142編)をまとめた用量反応メタ分析です。
全体の結果です。 果物・野菜を1日200g多く食べるごとに、次の相対リスクが観察されました。
- 冠動脈疾患0.92
- 脳卒中0.84
- 心血管疾患0.92
- 総死亡0.90
種類別に分けた部分が芽キャベツに関わります。 緑の葉物とアブラナ科野菜は心血管疾患・総死亡と逆の関係を示し、アブラナ科と緑黄色野菜は全がんリスクとも逆の関係を示しました。芽キャベツはアブラナ科です。
リスク低下は1日800gまで観察されました(がんは600g)。
ここではっきりさせるべきことが3つあります。
第一に、観察研究を集めたものなので因果関係ではありません。 野菜を多く食べる人はたばこが少なく運動が多く所得が高い傾向があります。統計で補正しても完全には取り除けません。
第二に、「芽キャベツだから」ではありません。 この分析が見たのはアブラナ科というカテゴリーです。ブロッコリー、キャベツ、ケール、カリフラワーも同じ枠にあり、芽キャベツ固有の寄与を切り分けた資料ではありません。
第三に、だから読み方は単純になります——「芽キャベツを食べろ」ではなく「野菜をもっと食べろ」。そしてそのほうが実行にも移しやすい。
このサイトが「中等度」と格付けする理由です。 規模は大きいが観察研究で、この野菜1つを名指しした根拠ではありません。
- 栄養データ
ビタミンK 177µgとビタミンC 85mg——オレンジより多い
生の芽キャベツ100g(5個ほど)あたり:
- 熱量43kcal、タンパク質3.38g、脂質0.3g
- 炭水化物8.95gのうち食物繊維3.8g、糖類2.2g
- ビタミンK 177µg——成人の目安量(男性120µg、女性90µg)を超えます
- ビタミンC 85mg——推奨量(90mg)の94%
- 葉酸61µg、カリウム389mg、カルシウム42mg
- ビタミンA 38µg、マンガン0.337mg
ビタミンC 85mgが驚きの数字です。 オレンジが53mg、レモンが53mg。芽キャベツ5個はオレンジ1個よりビタミンCが多い。 アブラナ科野菜は概してビタミンCが高く、なかでも芽キャベツは上位です。
ただしビタミンCは水と熱に弱い。 ゆでるとかなりの量が湯に出ます。蒸す・焼く・強火で短く炒めるほうが損失が少ない。
ビタミンK 177µgは逆に熱に強い。 脂溶性なので調理で大きく減らず、油と一緒に食べると吸収が上がります。
熱量43kcalにタンパク質3.38gで、野菜としてはタンパク質の比重が高い。食物繊維も3.8g入っています。
冷凍品も成分が大きく落ちません。 収穫直後に湯通しして凍らせるので、流通で数日たった生より良いこともあります。
- 栄養データ
苦味はグルコシノレートで、品種が変わりました
芽キャベツがまずい野菜として記憶されているのには理由があり、その理由は今では大部分なくなりました。
苦味の原因はグルコシノレート。アブラナ科野菜が共通して持つ硫黄含有化合物で、組織が傷つくとミロシナーゼという酵素に出会いイソチオシアネートに変わります。その過程で苦味と独特の硫黄臭が出ます。
1990年代に育種家がこの成分の低い品種を見つけました。 オランダの研究者が古い種子バンクから苦味の少ない系統を選んで交配し、その結果が今流通している品種です。今日売られている芽キャベツは30年前のものとは違います。
調理も半分の原因でした。 長くゆでると硫黄化合物が分解して臭いが強まり、色もくすみます。半分に切って油をまとわせ200°Cで20〜25分焼けば、縁がカラメル化して甘くなります。同じ野菜とは思えないほど変わります。
グルコシノレートの健康効果はどうか。 スルフォラファンをはじめイソチオシアネートが解毒酵素を誘導するという研究は多い。ただしヒトでがんや死亡といった結果を変えたという無作為化試験の根拠はまだありません。 上のメタ分析のアブラナ科の結果も観察研究です。
苦味の感じ方は人によって違います。 TAS2R38遺伝子の変異によって特定の苦味物質への感受性が分かれます。芽キャベツをことさら嫌う人は好みがうるさいのではなく、実際により苦く感じている可能性があります。
上手な食べ方
- 半分に切って切り口を下にして焼きます。 200°Cで20〜25分、縁が茶色くなるまで。
- ゆでないでください。 ビタミンCが湯に出て硫黄臭が強まります。蒸す・焼く・強火で短く炒めるように。
- ビタミンKは脂溶性です。 オリーブオイルを回すと吸収が上がります。
- 外側のしおれた葉を取り、根元を少し切ります。 十字に切り込みを入れる必要はありません——半分に切れば十分です。
- 小さいものがおおむね甘い。 大きいものは苦味が強い傾向があります。
- 霜に当たったものが甘い。 寒さにさらされるとでんぷんが糖に変わります。旬は晩秋と冬。
- 冷凍でも構いません。 収穫直後に湯通しして凍らせるので損失が少ない。
- 焼く前に下ゆでしないでください——水気が残って焼き色がつきません。
評価の読み方
効果ごとに、ヒトを対象とした研究がどこまで裏づけているかを4段階で示します。同じ食材でも項目によって評価は変わります。
- 栄養データ
- 食品成分表や保健機関の資料で確認できる事実です。臨床研究で検証する効能とは性格が異なります。
- 強い根拠
- 複数のランダム化比較試験やメタ分析で一貫して確認されています。
- 中程度の根拠
- ヒト研究はありますが、効果が小さいか結果が割れています。
- 初期の研究
- 細胞・動物研究、または小規模な予備研究の段階です。
- 確認されていない
- よく言われますが、ヒトを対象とした研究では確認されていません。
注意したいこと
- ワルファリンを服用中なら特に注意してください。 100gにビタミンKが177µg。やめろという意味ではなく、摂取量を一定に保てという意味です。急に増やしたり減らしたりするとINRが揺れます。食事を変える前に医療者に相談してください。
- 上のメタ分析は観察研究であり、芽キャベツ1つを名指ししたのではなくアブラナ科というカテゴリーを見たものです。
- 甲状腺疾患があるなら、アブラナ科のゴイトロゲンがヨウ素利用を妨げることがあります。ただし日常的な摂取量で問題になる根拠は弱く、加熱すればかなり減ります。
- 過敏性腸症候群(IBS)があるなら、芽キャベツは高FODMAPです。ガスと腹部膨満を起こします。
- 食物繊維と硫黄化合物のためガスが出やすい。 慣れていないなら少量から始めてください。
- ビタミンCはゆでると大きく減ります。 上の85mgは生の基準です。
- グルコシノレートの抗がん効果は、ヒト対象の無作為化試験で確立されていません。
この食材でつくる料理
出典
栄養の数値と健康に関する記述が依拠しているデータベースと保健機関です。
- 1Fruit and vegetable intake and the risk of cardiovascular disease, total cancer and all-cause mortality-a systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studiesメタ分析Aune D, et al. Int J Epidemiol 2017PMID 28338764
- 2USDA FoodData Central食品成分データベース
- 3NIH Office of Dietary Supplements保健機関
- 4European Food Safety Authority (EFSA)保健機関
- 5PubMed学術文献



