目次
どんな食材か
パイナップルはパイナップル科の多年草の果実です。木ではなく地面から育つ草で、一つの果実に見えるものは実は数十の小さな花がそれぞれ実を結び、軸を中心に一つに合わさったものです。皮の六角形の模様一つが花一つの跡です。南アメリカが原産です。ブロメラインというたんぱく質分解酵素があるため、たくさん食べると舌がひりひりし、ゼラチンを固まらなくさせます。収穫後はそれ以上熟しません。
学名 Ananas comosus
パイナップルの効能の話はほぼすべてブロメラインに向かいます。このページがまず切り分けることがあります——ブロメラインの臨床試験は、パイナップルを食べさせた試験ではありません。
2019年のメタ分析が扱ったのは親知らず手術後に投与したタンパク質分解酵素ブロメライン製剤です。定められた用量の錠剤で、パイナップルの果肉ではありません。そしてその中でも結果が割れました——痛みと生活の質スコアは改善しましたが、腫れと開口障害(口が開けにくい)には根拠がありませんでした。
パイナップルを食べたときにブロメラインがそのまま働くと仮定しにくい理由もあります。 ブロメラインはタンパク質(酵素)で、胃酸とペプシンの前では他のタンパク質と同じように分解されます。サプリメントはこれを腸溶コーティングで回避します。そして缶詰のパイナップルは加熱でブロメラインが失活し、活性が残りません。
パイナップル自体の確かな部分は成分表です。 100gにビタミンC 47.8mg(推奨量の53%)とマンガン0.927mg(目安量の40%)が入っています。よく食べる果物のなかでマンガンが最も多いほうです。
主な効果
- 初期の研究
親知らず手術後のブロメライン錠:痛みと生活の質は改善、腫れと開口障害は根拠なし
[1]2019年《Medicina Oral Patología Oral y Cirugía Bucal》。親知らず(第三大臼歯)手術後のブロメラインの効果を見た無作為化臨床試験6編の系統的レビュー・メタ分析です。
改善した項目です。
- 睡眠の質——標準化平均差 −1.19
- 社会的引きこもり——−0.97
- 外見——−0.77
- 24時間の痛み——−0.49、7日の痛み——−0.52
根拠がなかった項目です。
- 開口障害(口が開けにくいこと)——根拠なし
- 顔の腫れ——根拠なし
この対比がこのメタ分析の核心です。 ブロメラインはふつう抗炎症・腫れの軽減を理由に売られます。ところが肝心の腫れと開口障害、つまり炎症と最も直接つながる2つの指標で根拠が出ませんでした。改善したのは痛みと、患者自身が答える生活の質の項目です。
併せて読むべきことが3つあります。
第一に、6編です。 メタ分析に入った無作為化試験が6編で、歯科手術後の試験は一般に規模が小さい。
第二に、与えたのはパイナップルではありません。 分離・精製したタンパク質分解酵素製剤です。パイナップルを食べて同量の活性ブロメラインを得られるという根拠は、この研究にはありません。
第三に、この結果は親知らず手術というきわめて特定の状況です。 消化、体重、炎症性疾患、筋肉痛といった他の用途に広げられません。
正直な整理です——歯科手術後のブロメライン製剤については予備的な根拠があります。パイナップルを食べることの根拠ではありません。
- 栄養データ
ビタミンC 47.8mgとマンガン0.927mg——マンガンは一般的な果物で最も多いほう
生のパイナップル100gあたり:
- 熱量50kcal、炭水化物13.1g、糖類9.85g、食物繊維1.4g
- ビタミンC 47.8mg——推奨量(90mg)の53%
- マンガン0.927mg——目安量(2.3mg)の40%
- カリウム109mg、マグネシウム12mg、銅0.11mg、葉酸18µg
マンガンがこの果物の本当の特徴です。 よく食べる果物で100gあたりマンガンがこの水準なのは珍しい。りんごは0.035mg、バナナは0.27mg、オレンジは0.025mg。パイナップルは0.927mg——りんごの26倍です。
マンガンは骨形成と複数の酵素の補因子として使われます。 ただし欠乏がまれな無機質なので、この数値が臨床的に何かを変えるという根拠があるわけではありません。成分表の特徴にとどまり、このサイトはそれ以上を主張しません。
ビタミンC 47.8mgは1カップ(165g)で79mg、1日の推奨量に近い。ただしビタミンCは熱に弱いので、焼いたり加熱すると減ります。
糖類9.85gは果物として中程度です。 バナナ(12.2g)より低く、いちご(4.89g)より高い。ジュースは別です——パイナップルジュース1カップ(240ml)は糖25g以上で、食物繊維はほぼ消えます。
芯(コア)にブロメラインが最も多い。 硬いのでふつう捨てますが、すりつぶして使えます。
- 確認されていない
消化を助けるという話と、舌が痛くなる理由
この項目は確立されていない主張の整理です。
「パイナップルは消化を助ける」という話は、ブロメラインがタンパク質を分解する酵素だという事実から来ています。試験管では実際にタンパク質を切ります。しかし人がパイナップルを食べて消化が改善するという無作為化試験の根拠はありません。
理由を考えると自然です。
- ブロメライン自体がタンパク質です。 胃に入れば胃酸(pH 1.5〜3.5)とペプシンの前で他のタンパク質と同様に分解されます。
- 人の消化管はすでに自前のタンパク質分解酵素を十分に出します——胃のペプシン、膵臓のトリプシンとキモトリプシン。健康な人に補充が必要だという根拠はありません。
- サプリメントは腸溶コーティングと定量でこれを回避します。 果物を食べるのはそうではありません。
舌や口がピリピリするのは、むしろブロメラインが実際に働いている証拠です。 ただし働いている相手が食べ物ではなく口の中の粘膜のタンパク質です。パイナップルをたくさん食べると舌が薄く剥けるような感じがするのはそのためです。缶詰のパイナップルではこれが起きません——加熱で酵素が失活しているからです。
ゼラチンが固まらないのも同じ原理です。 生のパイナップルをゼラチンのデザートに入れると固まりません。ブロメラインがゼラチン(コラーゲンというタンパク質)を切ってしまうからです。缶詰を使うか、生の果実を先に湯通しすれば解決します。
肉をやわらかくするのに使うのは根拠のある使い方です。 これは体内の効果ではなく調理台の上で起きることなので、胃酸の問題がありません。ただし長く漬けると肉の表面が崩れます——30分を超えないほうがよい。
上手な食べ方
- 生の果実と缶詰を区別してください。 ブロメラインの活性は生にしか残りません。ビタミンCも缶詰では減ります。
- 芯を捨てないでください。 ブロメラインが最も多い部分で、すりつぶしてスムージーに入れられます。
- 下のほうが甘い。 切った後に上下を混ぜて盛ると甘さが均一になります。
- 熟したものを選ぶ基準は香りです。 根元から甘い香りがするべき。外皮の色は品種によって違います。
- 肉を漬けるときは30分以内。長く置くと表面が崩れます。
- ゼラチンのデザートには缶詰を使うか、生の果実を先に湯通ししてください。
- 舌が痛ければ塩水で軽くすすいでください。 酵素活性が下がります。
- 消化のために食べるのは勧めません——根拠がありません。
評価の読み方
効果ごとに、ヒトを対象とした研究がどこまで裏づけているかを4段階で示します。同じ食材でも項目によって評価は変わります。
- 栄養データ
- 食品成分表や保健機関の資料で確認できる事実です。臨床研究で検証する効能とは性格が異なります。
- 強い根拠
- 複数のランダム化比較試験やメタ分析で一貫して確認されています。
- 中程度の根拠
- ヒト研究はありますが、効果が小さいか結果が割れています。
- 初期の研究
- 細胞・動物研究、または小規模な予備研究の段階です。
- 確認されていない
- よく言われますが、ヒトを対象とした研究では確認されていません。
注意したいこと
- 上のメタ分析はブロメライン製剤の研究です。 パイナップルを食べることにこの結果を当てはめられません。
- 腫れと開口障害には根拠がありませんでした。 抗炎症目的の期待を、この研究は支えません。
- ブロメラインは抗血小板作用が報告されています。 ワルファリンや抗血小板薬を服用中、あるいは手術を控えているなら、サプリメント形態は避けて医療者に相談してください。
- 口腔粘膜のピリピリや唇の腫れはよくある反応です。 ひどければ摂取を中止してください。
- ラテックスアレルギーがあるなら注意してください。 パイナップルはラテックス・フルーツ症候群の交差反応食品に含まれます。
- 糖類が100gに9.85g、ジュースは1カップに25g以上です。 糖尿病があるなら生の果実で量を数えて召し上がってください。
- 逆流性食道炎があるなら酸度(pH約3.3)が症状を刺激することがあります。
- 消化改善、体重減少、炎症緩和についての主張は確立されていません。
この食材でつくる料理
出典
栄養の数値と健康に関する記述が依拠しているデータベースと保健機関です。
- 1Efficacy of proteolytic enzyme bromelain on health outcomes after third molar surgery. Systematic review and meta-analysis of randomized clinical trialsメタ分析Mendes ML, et al. Med Oral Patol Oral Cir Bucal 2019PMID 30573710
- 2USDA FoodData Central食品成分データベース
- 3NIH Office of Dietary Supplements保健機関
- 4European Food Safety Authority (EFSA)保健機関
- 5PubMed学術文献



