目次
どんな食材か
グレープフルーツは柑橘類の果実で、ぶんたんとオレンジが自然に交雑してできたと考えられています。18世紀にカリブ海のバルバドスで初めて記録されました。木にぶどうの房のようにまとまって実ることから英語名にぶどうが入っています。はっきりした苦みが他の柑橘と最も違う点で、その苦みはナリンギンという成分によるものです。いくつもの薬の代謝を妨げることが知られているため、薬を服用中の方は添付文書を確認する必要があります。
学名 Citrus paradisi
このページは効能から始めません。グレープフルーツは飲み薬とぶつかる代表的な食品 であり、それがこの果物についてまず知るべきことだからです。
グレープフルーツのフラノクマリンが 小腸壁のCYP3A4酵素を不可逆的に阻害します。 多くの薬はこの酵素でまず分解されてから血液に入るため、酵素が塞がれると同じ用量でも 血中濃度が想定より高くなります。
特徴が三つ。
- 量が少なくても起きます。 一杯、あるいは果物ひとつでも報告されています。
- 長く続きます。 阻害が不可逆なので体が酵素を作り直す必要があり、一日以上 続きます。薬と時間をずらしても効きません。
- 薬によります。 まったく影響を受けない薬も多い。
栄養で見ればよい果物です。42kcalでビタミンC 31.2mg、赤いものにはリコピンが1,420µg。ただしその話は薬の確認のあとです。
主な効果
- 強い根拠
薬物相互作用 — これがこのページの最初の項目である理由
[1]これは効能ではなく確認された危険です。
2013年に《CMAJ》へ載った検討がこの問題を整理しました。グレープフルーツのフラノクマリンが腸壁のCYP3A4を阻害し、その酵素で代謝される薬の吸収量が上がります。
影響を受けるとされる薬にはこうした系列があります。
- 一部の スタチン(シンバスタチン、ロバスタチン)— 筋障害のリスクが上がりうる
- 一部の カルシウム拮抗薬(降圧薬)
- 一部の 免疫抑制薬(タクロリムス、シクロスポリン)— 移植を受けた方に重要
- 一部の 抗不整脈薬、一部の 睡眠・抗不安薬、一部の 抗がん剤
重要な但し書きを三つ。
- 同じ系列でも薬によって違います。 スタチンにもグレープフルーツと無関係なものがあります(プラバスタチン、ロスバスタチンなど)。「スタチンだからグレープフルーツはだめ」とひとくくりにすると外れます。
- 方向が逆の場合もあります。 吸収を助ける輸送体をグレープフルーツが塞ぎ、かえって薬効が 下がる 組み合わせも報告されています。
- この一覧で自分で判断しないでください。 正確な答えは飲んでいる薬の説明書と、薬剤師・医師にあります。
いちばん悪い対応は薬を自己判断でやめることです。 グレープフルーツをやめるほうが常に安全です。
- 栄養データ
半分でビタミンCが1日推奨量の3分の1
グレープフルーツ100gに ビタミンC 31.2mg。半分(約120g)で37mgとなり、成人推奨量(100mg)の37%です。
赤いグレープフルーツにはリコピンが1,420µg。 白いものにはほとんどありません — 赤い色がそのままリコピンです。トマト(生2,570µg)より少ないものの、果物のなかでは指折りです。
リコピンと健康結果の関係は観察研究でよく報告されますが、サプリで与えた試験では結果が一貫しません。 トマトのページと同じ話で、ここでも同じ程度までしか言えません。
ビタミンAは58µg RAE、葉酸13µg、カリウム135mg。熱量は42kcalと果物のなかでは低い。
- 栄養データ
「グレープフルーツダイエット」は確立していない
食前にグレープフルーツを食べると痩せるという話は古くからあります。小規模試験で体重が少し減ったという報告はあるものの、機序がグレープフルーツ自体なのか「食前に低カロリーのもので腹を満たしたこと」なのか区別できていません。
後者なら特別なのはグレープフルーツではなく、スープやサラダでも同じことが起きます。 実際、食前に水や低カロリー食を摂ると総摂取が減るという根拠は別にあります。
脂肪燃焼を助ける酵素があるとか、「マイナスカロリー」だといった主張には根拠がありません。
食べる理由は十分あります — 熱量が低く、ビタミンCがあり、水分が多くて満腹感がある。ただしそれが特別な減量効果という意味ではありません。
上手な食べ方
- 薬を飲んでいるならまず確認を。 説明書に「グレープフルーツ」があるか見て、なければ薬剤師に尋ねればよい。この一回の確認がこのページのすべてです。
- 時間をずらすのは解決になりません。 酵素の回復に一日以上かかります。相互作用のある薬ならグレープフルーツを外すのが正解。
- ジュースも同じです。 むしろジュースのほうが一度に多く入ります。
- 薄皮まで食べると 食物繊維は増えますが苦い。苦味のナリンギンは相互作用の主犯ではないことも知っておいてください — 原因はフラノクマリンです。
- 砂糖をかけないこと。 苦味が苦手なら赤いほうが白より穏やかです。
- 切ってから置くとビタミンCが減ります。食べる直前に切ってください。
評価の読み方
効果ごとに、ヒトを対象とした研究がどこまで裏づけているかを4段階で示します。同じ食材でも項目によって評価は変わります。
- 栄養データ
- 食品成分表や保健機関の資料で確認できる事実です。臨床研究で検証する効能とは性格が異なります。
- 強い根拠
- 複数のランダム化比較試験やメタ分析で一貫して確認されています。
- 中程度の根拠
- ヒト研究はありますが、効果が小さいか結果が割れています。
- 初期の研究
- 細胞・動物研究、または小規模な予備研究の段階です。
- 確認されていない
- よく言われますが、ヒトを対象とした研究では確認されていません。
注意したいこと
- 飲んでいる薬があるなら必ず確認を。 スタチン、一部の降圧薬、免疫抑制薬、一部の抗不整脈薬が代表です。
- 薬を自己判断でやめないこと。 グレープフルーツをやめるほうが常に安全です。
- グレープフルーツだけの問題ではありません。 ブンタンやセビリアオレンジ(マーマレード用)などにもフラノクマリンがあります。普通のオレンジにはほとんどありません。
- 移植を受けた方 はとくに注意を。免疫抑制薬の濃度が揺れると危険です。
- 逆流性食道炎があるなら 酸が症状を刺激することがあります。
- 赤いグレープフルーツのリコピンが健康結果を変えるという根拠はまだ確立していません。
この食材でつくる料理
出典
栄養の数値と健康に関する記述が依拠しているデータベースと保健機関です。



