目次
どんな食材か
えごま油は、えごまの種を搾って得る油です。えごまはシソ科の一年草で韓国・中国・日本で栽培され、「エゴマの葉」として売られる葉も同じ植物のものです。ごまとは別の植物なので、ごま油とも別物です。香りが強く香ばしく、ナムルを和えたり海苔を焼いたりするときに使います。不飽和脂肪が多く酸化しやすいため、冷蔵で保存し開封後は早めに使い切るのが良いです。高温で揚げる用途には向きません。
学名 Perilla frutescens
えごま油はえごまの種を搾った油です。韓国料理ではナムルや海苔、ビビンバに使う油です。
この油を説明する成分はαリノレン酸(ALA)です。 植物性のオメガ3で、よく使う食用油のなかでえごま油の割合が高いことは広く知られています。
ところがこのサイトはその割合を数字で書いていません。 米国農務省の標準成分データベースにえごま油の項目がなく、ブランド製品の資料には熱量と脂質、飽和脂肪しかありません。成分表を空にしてある理由がそれです。
代わりにヒトを対象にした試験が一つあります。12か月のものです。
2023年《Phytotherapy Research》。
- 日本人成人52人(平均54.2±6.4歳)
- 無作為、二重盲検、プラセボ対照
- えごま油群27人に1日7.0mL、対照群25人にオリーブ油7.0mL
- 12か月
- 測定:右かかとの定量的超音波による若年成人平均比(%YAM)、血中TRACP-5bとBALP、赤血球膜の多価不飽和脂肪酸、血中抗酸化指標
結果です。
- %YAMがプラセボ群に対して有意に上がりました
- 骨吸収の指標であるTRACP-5bが有意に下がりました
- 骨形成の指標であるBALPは変化がありませんでした
- 赤血球膜のALAが上がり、抗酸化指標(BAP/d-ROM比)も上がりました
合わせて見るべきことが三つあります。 下に記します。
主な効果
- 初期の研究
12か月、二重盲検——ただし測ったのはかかとの超音波です
[1]2023年《Phytotherapy Research》、設計は上記のとおり。
指標 えごま油群 %YAM(若年成人平均比) 上昇 プラセボ群に対し有意 TRACP-5b(骨吸収) 低下 プラセボ群に対し有意 BALP(骨形成) 変化なし 赤血球膜ALA 上昇 プラセボ群に対し有意 BAP/d-ROM比(抗酸化) 上昇 プラセボ群に対し有意 設計の長所から書きます。12か月は長い期間です。 栄養試験の多くは4〜12週で終わりますが、骨はその期間では動きません。二重盲検でプラセボ対照であり、赤血球膜のALAが実際に上がったことは参加者が油を実際に摂ったという証拠でもあります。
ところが三つを合わせて見る必要があります。
第一に、測ったのは骨密度ではありません。
この試験は右かかとの定量的超音波(QUS)で測定しました。骨粗鬆症の診断と骨密度測定の標準は二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)です。 QUSはスクリーニングの道具です。両者は測る物理量が違い、QUSの値がDXAの骨密度の代わりにはなりません。
そして骨折は測っていません。 骨の健康で究極の結果は骨折ですが、この試験の結果は指標です。
第二に、52人です。 一群に25〜27人。12か月維持したのは立派ですが、規模が小さく一つの試験で結論は出せません。再現が必要です。
第三に、プラセボがオリーブ油でした。
これは設計の面白いところです。何も与えなかったのではなく、別の油7.0mLを与えました。 盲検化には好都合ですが、比較の性格が「えごま油対何もなし」ではなく、「えごま油対オリーブ油」になります。 結果はそう読んでください。
BALPが変わらなかったことも合わせて読むべきです。 骨は吸収と形成が一緒に回っていますが、この試験では吸収側だけが下がり形成側はそのままでした。著者らが「骨吸収を抑制することによって」と書いたのはそのためです。
正直な結論です。
- 12か月の二重盲検プラセボ対照試験で骨吸収の指標が下がりました
- ただし測定はかかとの超音波で、DXAの骨密度ではありません
- 骨折は測定されていません
- 52人の単一試験です
- 比較対象はオリーブ油でした
- 等級を「初期」に置きます
- 確認されていない
ALAは魚のオメガ3ではありません
えごま油のオメガ3はαリノレン酸(ALA)です。 このサイトのくるみ、亜麻仁、チアシード、キャノーラ油と同じ種類です。
魚のEPA・DHAとは別の物質です。
体はALAをEPAに変えます。ただし変換率は一桁パーセント台で、DHAへはそれよりはるかに低い。 ですから「えごま油を摂れば魚を食べなくてよい」は成り立ちません。
上の試験がその点をよく示しています。 赤血球膜のALAが上がったと報告しました。ALAが上がったのであって、EPAやDHAが上がったのではありません。
ALA自体が必須脂肪酸であることは確かです。 体が作れないので必ず食べる必要があり、えごま油はそれを効率よく供給します。ただし魚の代替ではなく別の栄養素です。
成分表を空にした理由をもう一度書きます。
えごま油のALA比率が高いことは広く知られていますが、このサイトが使う米国農務省の標準成分データベースにえごま油の項目がありません。 ブランド製品の資料には熱量と脂質、飽和脂肪しかなく、ALA比率がありません。
ほかの油と同じく「100g=脂質100g、884kcal」と書くことはできます。 ところがその二行はオリーブ油もキャノーラ油もごま油も同じで、えごま油について何も語りません。 この油を説明する一行を欠いた表をつくるくらいなら、空にして理由を書くほうを選びました。
出典ができれば埋めます。 韓国の食品成分データベースが入ればそのとき書きます。
量についての参考です。 上の試験が使った量は1日7.0mLで、約小さじ1.5です。ナムル一皿に回しかける量に近い。油なので大さじ1杯が14gで124kcal前後という点はほかの油と同じです。
- 栄養データ
酸敗——えごま油でもっとも重要な実用情報です
えごま油を扱うとき、効能より先に知るべきは保存です。
多価不飽和脂肪は酸敗します。 二重結合が多いほど空気と光と熱に弱い。ALAは二重結合が三つあり、食用油のなかでもっとも酸化しやすいほうです。 オリーブ油の主成分であるオレイン酸は二重結合が一つで、はるかに安定しています。
ですからえごま油はほかの油と違う扱いが要ります。
- 小さい瓶で買ってください。 大きい瓶を長く使うと、使い切る前に酸敗します
- 開封したら冷蔵してください。 これはごま油より重要です
- 暗い色の瓶に入ったものを選んでください。 光が酸化を速めます
- 1〜2か月以内に使ってください
- においで分かります。 古びた、ペンキのような、生臭いにおいがしたら酸敗です。捨ててください
酸敗した油は体によくありません。 酸化した脂質とその分解産物は炎症との関連で研究される対象ですし、そもそもALAを摂るために買った油で、そのALAがすでに酸化しているなら食べる理由も消えます。
加熱しないでください。
えごま油は発煙点が低く、加熱するとALAが分解します。このサイトのオリーブ油・キャノーラ油の比較に書いたとおり、油は用途を分けて使うのが合理的です。
- えごま油 — ナムルの和えもの、海苔、ビビンバ、仕上げ用
- 炒めものとオーブン — オリーブ油かキャノーラ油
- 揚げもの — 精製油
チャーハンをえごま油で作らないでください。 香りも飛びALAも失います。
注意点を記します。
えごまはシソ科です。 シソと同じ属で、ミント・バジル・ローズマリーと同じ科です。まれですがアレルギーが報告されています。
抗凝固薬を飲んでいる方は主治医に相談してください。 オメガ3脂肪酸が血小板の機能に影響しうるという研究があります。食品として使う量で問題になることはまれですが、手術を控えている方や抗凝固薬を使っている方は伝えておくほうがよい。
えごま油は油です。 大さじ1杯が120kcal前後。体によい油でも注ぐ量は数えてください。
上手な食べ方
- 試験が使った量は1日7.0mL、約小さじ1.5です。
- 加熱しないでください。 発煙点が低くALAが分解します。仕上げ用の油です。
- 小さい瓶で買い、開封したら冷蔵してください。 食用油のなかでもっとも酸化が速い。
- 1〜2か月以内に使ってください。 暗い瓶のほうがよい。
- 古びた、ペンキのようなにおいがしたら捨ててください。 酸敗です。
- 炒めものと揚げものにはほかの油を使ってください。
- 魚の代わりにはなりません。 ALAはEPA・DHAとは別の物質です。
- 大さじ1杯が120kcal前後です。
評価の読み方
効果ごとに、ヒトを対象とした研究がどこまで裏づけているかを4段階で示します。同じ食材でも項目によって評価は変わります。
- 栄養データ
- 食品成分表や保健機関の資料で確認できる事実です。臨床研究で検証する効能とは性格が異なります。
- 強い根拠
- 複数のランダム化比較試験やメタ分析で一貫して確認されています。
- 中程度の根拠
- ヒト研究はありますが、効果が小さいか結果が割れています。
- 初期の研究
- 細胞・動物研究、または小規模な予備研究の段階です。
- 確認されていない
- よく言われますが、ヒトを対象とした研究では確認されていません。
注意したいこと
- 12か月の試験が測ったのはかかとの定量的超音波で、骨密度測定の標準であるDXAではありません。
- 骨折は測定されていません。 結果は指標です。
- 参加者は52人、一群25〜27人の単一試験です。
- プラセボはオリーブ油7.0mLでした。比較は「えごま油対オリーブ油」です。
- 骨形成の指標(BALP)は変わりませんでした。 吸収側だけが下がりました。
- ALAは魚のEPA・DHAとは別の物質で変換率が低い。魚の代わりにはなりません。
- 酸敗が速い。 冷蔵して1〜2か月以内に使い、古いにおいがしたら捨ててください。
- 抗凝固薬を使っている方や手術を控えている方は主治医に伝えてください。
- 成分表が空です。 米国農務省の標準データベースにえごま油の項目がなく、ない数字を推定して埋めることはしませんでした。
栄養成分
成分表は空にしてあります。米国農務省の標準成分データベースにえごま油の項目がなく、ブランド製品の資料には熱量と脂質、飽和脂肪しかないため、この油を説明する数字であるαリノレン酸の割合がありません。ほかの油と同じく100gを脂質100gと書くことはできますが、その二行はどの油も同じでこの材料について何も語りません。ない数字を推定して埋めることはしませんでした。
この食材でつくる料理
出典
栄養の数値と健康に関する記述が依拠しているデータベースと保健機関です。



