目次
どんな食材か
カモミールティーはキク科の一年草の花を乾かして湯で抽出したお茶です。ヨーロッパと西アジアが原産です。チャノキの葉から作る緑茶や紅茶とは違い、カフェインを含みません。白い花びらに黄色い中心という小さなデイジーのような姿で、りんごを思わせる甘い香りがします。ギリシャ語の語源も大地のりんごという意味です。熱い湯で3〜5分抽出し、長く置くと苦みが出ます。キク科のアレルギーがある方は注意が必要です。
学名 Matricaria chamomilla
カモミールティーは寝る前に飲むお茶として定着しました。その位置を支える根拠が実際にあるのか——それがこのページの問いです。
2019年《Phytotherapy Research》が11のデータベースを検索し、無作為化・準無作為化試験12件をまとめました。4つを別々に見ています。
- 睡眠の質——改善した。標準化平均差 −0.73(95% CI −1.23〜−0.23)、P < 0.005
- 全般性不安障害(GAD)——改善した。ただし幅は小さい
- 不安——差がなかった(試験3件、P = 0.4214)
- 不眠症——試験が1件だけで、有意な変化なし
「睡眠の質」と「不眠症」が分かれたことが、この結果の要点です。 眠りをどう感じたかは良くなり、不眠症という状態の重症度は動きませんでした。
著者の要約もそのままです——「睡眠の質と全般性不安障害には効果がありそうだ。不安と不眠症についての根拠は少ない」。
主な効果
- 中程度の根拠
睡眠の質は良くなった——不眠症ではない
[1]2019年《Phytother Res》の系統的レビュー・メタ解析です。PubMed、Science Direct、Cochrane Central、Scopusを含む11のデータベースを検索し、無作為化比較試験12件を含めました。
睡眠の質
- 標準化平均差 −0.73(95% CI −1.23〜−0.23)、P < 0.005
標準化平均差0.73は中程度から大きめの効果量です。信頼区間が−1.23から−0.23と広いことは、参加者数が十分ではないことも意味します。
不眠症
- 試験は1件だけ。 その1件で不眠重症度尺度(ISI)は有意に変化しませんでした(P > 0.05)。
この2つを並べて読むのが正直なやり方です。 「睡眠の質」はふつう自己記入式の質問票(ピッツバーグ睡眠質問票など)で測ります。寝つきの感じ、すっきり感、満足度です。「不眠症」は入眠までの時間、中途覚醒の回数、それによる日中の機能低下を含む臨床尺度です。
前者は動き、後者は動きませんでした。 しかも後者は試験が1つなので、動かなかったという事実自体の根拠も薄い。
お茶と抽出物は別物です。 この解析は「カモミール」を対象としており、標準化された抽出物を使った試験が混ざっています。お茶1杯に入る量はそれと同じではありません。上の結果を湯のみに移すときに踏まえるべき点です。
- 中程度の根拠
全般性不安障害は良くなった——1.4点だが
[1]同じ解析で全般性不安障害(GAD)はハミルトン不安評価尺度(HAM-A)で測られました。
- 2週後——平均差 −1.43(95% CI −2.47〜−0.39)、P = 0.007
- 4週後——平均差 −1.79(95% CI −3.14〜−0.43)、P = 0.0097
統計的には有意です。ただしこの数字の大きさを知るには尺度を知る必要があります。
HAM-Aは0点から56点の尺度です。 臨床試験で「反応した」とみなす一般的な基準は、点数が半分になること。中等度のGAD患者の出発点はふつう20点前後なので、反応とは10点ほど下がることです。
1.43点はその近くにも届きません。 4週の1.79点も同じです。
そして一般的な不安(状態不安)には差がありませんでした。
- 標準化平均差 −0.15(95% CI −0.46〜0.16)、P = 0.4214、試験3件
信頼区間が0をまたぎます。効果があるとは言えません。
まとめると——診断名のついた全般性不安障害では小さいが一貫した変化があり、日常的な緊張や不安には根拠がありません。著者の表現では不安と不眠症について「根拠は少ない」。
有害事象は軽微でした。 12件のうち3件が軽い有害事象を報告しています。
- 栄養データ
カフェイン0、熱量0
淹れたカモミールティー100gのうち99.7gが水です。ほかはほとんどありません。
- 熱量1kcal
- カフェイン0mg
- 炭水化物0.2g、カリウム9mg、カルシウム2mg、マンガン0.044mg
栄養を得るために飲むお茶ではありません。 この表で意味のある数字は2つだけ——0と0です。
その2つの0こそがこのお茶の使いどころです。
- 夜に飲んでも睡眠を妨げません。 カフェインの半減期は5〜6時間で、午後遅くの紅茶(1杯約48mg)やコーヒー(95〜200mg)は睡眠に影響します。カモミールにはその問題がありません。
- 甘い飲料の代わりになります。 炭酸飲料1杯が約100kcal、砂糖26g。無糖で飲むなら、この置き換えがこのページで最も確実な利益です。
ちなみにカモミールは茶葉ではありません。 緑茶・紅茶・ウーロン茶はすべて同じ木(Camellia sinensis)で、カモミールはキク科の花です。カフェインが0なのはそのためで、アレルギーの注意が必要な理由もそこにあります。
上手な食べ方
- 熱湯でふたをして5分淹れます。香り成分が湯気と一緒に逃げないよう、ふたをするのが肝心です。
- 就寝30〜60分前が通常のタイミングです。ただし寝る直前に大量に飲むと、トイレでかえって目が覚めます。
- 砂糖なしで。 市販の「カモミールブレンド」には糖の入ったものがあります。
- 花を丸ごと使ったもののほうがティーバッグの粉より香りが良い。ただし成分の違いは確認されていません。
- 眠れないからと量を増やさないでください。 上の根拠は用量を増やすほど良くなることを示していません。
- 不眠が1か月以上続くなら、お茶ではなく受診の問題です。上の解析で不眠の指標は動きませんでした。
- 睡眠習慣——就寝・起床時刻を一定に、部屋を暗く、カフェインを控える——のほうが根拠はずっと強い。
評価の読み方
効果ごとに、ヒトを対象とした研究がどこまで裏づけているかを4段階で示します。同じ食材でも項目によって評価は変わります。
- 栄養データ
- 食品成分表や保健機関の資料で確認できる事実です。臨床研究で検証する効能とは性格が異なります。
- 強い根拠
- 複数のランダム化比較試験やメタ分析で一貫して確認されています。
- 中程度の根拠
- ヒト研究はありますが、効果が小さいか結果が割れています。
- 初期の研究
- 細胞・動物研究、または小規模な予備研究の段階です。
- 確認されていない
- よく言われますが、ヒトを対象とした研究では確認されていません。
注意したいこと
- キク科アレルギーがあるなら避けてください。 ブタクサ、菊、デイジー、ヨモギに反応する人はカモミールにも交差反応を起こし得ます。まれですがアナフィラキシーの報告があります。
- ワルファリンなどの抗凝固薬を服用中なら医療者に相談してください。カモミールのクマリン成分に関連した出血例の報告があります。
- 妊娠中は勧められません。 子宮収縮の可能性が挙げられ、安全性が確立されていません。
- 手術前は中止してください。 鎮静薬・麻酔薬と重なり得ます。
- 鎮静薬や睡眠薬を服用中なら作用が重なる可能性があるので確認を。
- 不眠症の治療の代わりにはなりません。 上の解析で不眠重症度は有意に変化しませんでした。
- 上の根拠は試験12件の規模で、著者自身も「より大きな無作為化試験が必要」と書いています。
お悩み別の根拠
出典
栄養の数値と健康に関する記述が依拠しているデータベースと保健機関です。
- 1Therapeutic efficacy and safety of chamomile for state anxiety, generalized anxiety disorder, insomnia, and sleep quality: A systematic review and meta-analysis of randomized trials and quasi-randomized trialsメタ分析Hieu TH, et al. Phytother Res 2019PMID 31006899
- 2USDA FoodData Central食品成分データベース
- 3European Food Safety Authority (EFSA)保健機関
- 4NIH Office of Dietary Supplements保健機関
- 5PubMed学術文献



